やがて、会社設立からほぼ10年が過ぎようとしていた1971(昭和46)年のこと。鳥羽のもとに、ヨーロッパ各国のコーヒー業界の動向をさぐる視察ツアーの誘いが舞い込みました。
鳥羽は早朝のシャンゼリゼ通りで、出勤途中の人々がカフェのカウンターに幾重にも並んでクロワッサンを食べ、コーヒーを飲んでいる様を眺めながら、しきりにうなずいていました。鳥羽はその光景を目にしながら「これだ!」と心の中で叫んでいました。「やがて日本でも立ち飲みコーヒーの時代が必ずやってくる」。
ことにドイツでは、コーヒースタンドの店先でコーヒー豆の挽き売りまでしていることに、新たな衝撃を受けました。このヨーロッパの旅が、「ドトールコーヒー」の将来にとって大きな飛躍への原風景となるかもしれない、と鳥羽は確かな手ごたえを感じていました。