ブラジルから帰国した鳥羽は、約1年の準備期間を経て、コーヒー豆の焙煎会社を設立します。1962(昭和37)年、鳥羽24歳の春でした。社名は、サンパウロで住んでいた地名にちなんで「ドトールコーヒー」と名づけました。
時あたかも高度大衆消費社会の兆しが見えはじめていた頃。人々は、心身共にかつてない消耗を強いられる時代でもありました。
そんな流れを背景に、鳥羽はいつのころからか抱き続けてきた“喫茶業の意義”を、実現・追及してみたい欲求にかられはじめていました。その意義とは「一杯のおいしいコーヒーを通じて、お客様に安らぎと活力を提供すること」。それこそが喫茶業の使命である、と。鳥羽の中で強く沸き上がってきたこの理念こそ、いまも「ドトール」の味づくり・店づくり・人づくりに脈々と息づいている基本精神でもあるのです。
設立当時の社屋(東京・港区)