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ひらめきの実践が人手不足解消へ エクセルシオール カフェ、外国人採用への挑戦 H. Nishida, Y. Kim, Y. Hara

H. Nishida,
Y. Kim,
Y. Hara
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人口減少に採用難、そして人手不足……。業界を問わず、日本では圧倒的な人手不足の状態が続いています。当然、それは当社のような外食産業にも当てはまります。この現状を打破する推進力となった逆転の発想。課題解決の糸口をたぐり寄せた社員の強みとひらめき、そして地道な努力の軌跡を紹介します。

人が集い、人をもてなすカフェ。でも、働く人がいなかったら?

あなたは、いつコーヒーを飲みたいと思いますか?

ほっとしたいとき、リフレッシュしたいとき。

ひとりで集中したいときや、誰かと一緒にやすらかな時間を過ごしたいときかもしれません。

一杯のおいしいコーヒーで、「また、がんばろう」と思える活力が生まれたりする瞬間があります。

カフェはそんな時間を——価値を提供する場。

そこには、ひとりひとりのお客様と向き合い、おもてなしの心で接するスタッフの存在が欠かせません。

しかし、そうした理想の前に、高い壁が立ちはだかっていました。

それが店舗における慢性的な人材不足です。エクセルシオール カフェのスーパーバイザー(SV)として働く西田 宗央もこの課題に向き合っているひとりです。

西田 「当社では、学生や主婦の方など世代も属性も多様な方々がパートナー(パート・アルバイト)として働いています。彼らは店舗運営における頼もしい戦力ですが、テスト期間や年末年始にはごっそりシフトに穴があいてしまうのも事実です」

また、店舗の中には立地的な制約から採用活動が厳しい店舗もあります。

西田 「多くのパートナーが勤務を希望するのは、基本的には学校や自宅に近い店舗です。そのため、都内のビジネス街では採用活動が非常に難しく、ピークタイムでも少人数で運営せざるを得ない状況になってしまう店舗が少なくありませんでした」

ビジネス街の店舗は、出勤前や仕事の合間、ランチタイムを過ごす常連のお客様が多い傾向にあります。慢性的な人材不足は、サービスの品質、店舗やブランドの魅力に影響を及ぼすリスクにもなりかねません。

現場に立つスタッフは、募る危機感を解消できないまま綱渡りの日々。

このままでは、人手不足が理由で店舗運営が立ち行かなくなるかもしれない……。

店舗が抱える窮状には根本的な解決策が求められていました。

希望の光は“外国人採用”意外な発想から突破口が見えてきた!

近年、訪日外国人観光客数の増加の裏で、年間約30万人もの外国人が留学生として日本にやってきています。

さらに、ワーキングホリデービザの利用者を加えると、その数字はさらに増えています。

この事実が、エクセルシオール カフェに大きな意味をもたらすことになるのです。

2018年、西田はある人材との出会いを果たします。

エクセルシオール カフェ初の外国人店長キム ヨンイルでした。スーパーバイザーの西田が担当するエリアの店長だったことから二人は密なコミュニケーションをとるようになります。

西田 「ヨンイルとの業務上のコミュニケーションを通して、外国人スタッフのポテンシャルの高さを目の当たりにしました。彼の姿を通して、多くの外国人スタッフに活躍してほしいという気持ちの変化が生まれました」

韓国出身のキムは日本の大学を卒業後、兵役義務のため一旦帰国。

兵役を終えると再び日本に戻り、2018年4月にドトールコーヒーへ入社しました。

キム 「自分の可能性を試したい、もっと成長したいとの想いで、日本へ戻ることを決意しました。外国人としての就職に不安はあったものの、相談した父親の『広い世界で経験を積みなさい』という言葉も後押しになりました。
かねてから仕事をするなら接客業がいいと思っていました。学生時代も飲食店でアルバイトしていたのですが、お客様と直接話して、喜んでいただく姿を見られるのがうれしくて。ドトールコーヒーでは数年前から積極的に外国人が採用されていたので、ぜひここでがんばってみようと思って入社を決めたんです」

西田とキムの出会いは、エクセルシオール カフェにとって“外国人採用”という新たな希望を生みました。

もちろんそれは同時に、新たなチャレンジのはじまりでもあったわけですが——。

パートナーの多くが日本人学生のエクセルシオール カフェにとって、テスト時期や年末年始などシフトを埋めるのが難しい時期でも外国人パートナーが働いてくれるようになれば、日本の年中行事に左右されず働き手を確保できるようになります。

さらに「自主的に外国(日本)に訪れ、日本語を学ぼうと勉強したり、日本文化に触れようとしたりと一人ひとりの意識の高さが、業務においてもおのずと現れ出ています」と、西田は言います。

とはいえ、もちろん超えるべきハードルもありました。

西田 「まず、留学生は1週間に28時間までしか勤務できないという時間の上限が定められています。また、実際に働くうえでは言語化が難しい日本の価値観や文化の違いへの理解が欠かせません。そうした面では、日本人パートナーを採用する以上に“定着”は難しいのです」

エクセルシオール カフェに射した、外国人採用という可能性の光。

希望であり、チャレンジでもある取り組みを推進するために、また新たな仲間が登場しました。

仲間とともに広がる可能性。社内連携で「採用」と「定着」をめざす

外国人採用を推進するために、西田とキムは韓国人ネットワークの伝手を生かしてワーキングホリデーの採用に焦点を絞りました。

キム 「エクセルシオール カフェに限らず、どの店舗でも採用は大きな課題です。特に、同期の仲間が採用難に悩む姿から『これは何としても解決すべき課題だ』と、自分ごととして真摯に感じていました」

解決の糸口が見えてきたその先に浮かび上がったのが、外国人採用の先行事例と、韓国語に堪能な日本人店長の存在です。

エクセルシオール カフェ麹町三丁目店の店長を務めていた原 裕樹は、積極的な外国人採用と定着、店舗づくりを体系的に推進していました。

原 「まずは働き手を確保するために、語学学校への働きかけや既存パートナーからの紹介を推進していました。こうした草の根活動を当時の店舗の立地から“麹町メソッド”と呼んでいます(笑)
こうした努力が功を奏し、現在は外国人パートナーの比率が日本人を上回るまでになりました。採用だけでなく店舗運営の本質でもありますが、手段より大切なのは、働きたくなる店舗づくり。清掃ひとつ取ってもきっちりと徹底することで、国籍を問わず『この店で働きたい』と思われるような空気づくりを心がけました。そんな店舗の魅力はお客様にもきっと伝わるはずです」

また、たとえ応募が増え、採用にいたっても、店舗運営の戦力になれなければ、真の人手不足解消とは言えません。

「採用」と「定着」は両輪の関係性にあります。

そこで、西田がひらめいたのは、韓国語に堪能な内田 友亮の知見を借りることでした。

「彼なら、韓国人パートナーの定着に一役買ってくれるのではないか!」

内田は韓国での留学やビジネスの経験がありながらも、通常の店長業務では得意な語学を生かす機会にはなかなか恵まれませんでした。

内田「正直、店長としてもうまくいかないことが多く、当時はくすぶっていましたね。そんな時に西田さんから声を掛けられ、このプロジェクトの話を聞き、ようやく自分の居場所を見つけた気がしました」

キムや原らが新たに採用した韓国人パートナーを対象に、内田が講師となって全編韓国語によるオリエンテーションを実施したのです。

内田「採用者は日本に滞在し一定の日本語力を携えているので、コミュニケーションに困るわけではありません。ただ、お互いにとっての当たり前や常識の違いで損をして、活躍ができないのはもったいないなという想いがあって。
たとえば日本人の時間厳守を重視する価値観や、物は両手で渡すといった文化的背景の説明を丁寧に行なうことで、オペレーションやルールへの理解を深め、定着の第一歩にしたいと考えたのです」

オリエンテーションの後は、エクセルシオール カフェ麹町三丁目店でレジ研修へ。

同じく外国人パートナーの多い店舗で実地研修することで、スムーズにオペレーションを実践的に身につける仕組みをつくりあげました。

それぞれの個性や強みを生かし、課題解決に取り組む仲間たちの絆。

上司や会社が現場の創意工夫を後押しすることで拓かれた可能性が、まさしく現場の未来を変えていく力となっていったのです。

希望の光に限りはない エクセルシオール カフェの未来はどこまでも

日本の場合、ワーキングホリデービザの期限は1年間。

基本的には来日から1年後に帰国する——つまり“有期雇用”が前提となっています。

西田 「採用ターゲットを絞った段階から、この点は懸念でもありました。しかし、帰国のタイミングがはっきりしているので、次のパートナーを拡充しやすいと気づいたんです。“ワーキングホリデー枠”のように定め、引き継ぎながら運営していけるのがベストですね。
また、本人の希望次第では特定技能就労ビザを取得し、長く働いてもらうことも可能です。社員登用などさらに活躍の幅が広がります。実際にワーキングホリデーから就労ビザを取得し、社員としての入社が決まっているパートナーもいます」

原 「採用から定着までしっかりとフォローできれば、国籍を問わず幅広くチャンスがあります。現場からその可能性を発信していきたいですね」

この取り組みは着々と進行し、2020年2月時点では、エクセルシオール カフェ全体で働くワーキングホリデーの韓国人が約40名に達しました。また、ドトールグループ全直営店で働く外国籍就労者は28ヵ国568名にも上り、大きな戦力として成果が出始めています。

西田 「初期トレーニングに要する時間も、実は日本人と比較してそんなに変わりません。約1ヵ月もあれば問題なく店舗で働けるようになります。数ヵ月もすると トレーニングする側になっていることだってあります(笑)」

現場の想いからはじまったこの取り組みをさらに拡大させ、ひいては全社展開も視野に入れていきたい、と語る西田。

他部署と連携しながら、受け皿を広げていきたいと語るその表情からは、自らの職務領域にとらわれず全社を見つめてより良い未来をめざそうとする熱意があふれていました。

一方、キムには「いつか韓国にエクセルシオール カフェを出店させたい」という夢があります。

キム 「ドトールコーヒーは、韓国でもネームバリューがあります。留学やワーキングホリデーの期間中にエクセルシオール カフェで働いた人たちが帰国し、良いイメージを発信してくれれば、さらなるブランド力の向上につながるはず。きっといつか自分の夢も叶うと信じています」

店舗運営の大きな課題だった人材確保。

解決への試行錯誤が開いた扉の先に待っていた可能性の光を、それぞれが自らの場所に立ち、これからも追いかけ続けていきます。

A.Kuroki
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Y. Araki