豆の買付担当に聞く“コーヒー豆の選び方”/珈琲道のプロに聞く。
今回は、世界約20カ国から豆を選定・買付を担当している平田氏に、コーヒー豆の選び方や楽しみ方について聞きました。
Profile
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平田 弦 株式会社ドトールコーヒー コーヒー豆の調達、商品設計(原料選定・焙煎度)、品質管理、サステナビリティ関連の業務に従事している。コーヒーマイスター、Qアラビカグレーダー、J.C.Q.A認定コーヒー生豆鑑定マスター資格保持。 |
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資格取得をきっかけに焙煎→買付担当へ
──元々はドトールコーヒーショップの店員だったと伺いました。
そうです。ショップで店長として働いていたころ、売店商品をもっと自信をもって販売するため、「コーヒーマイスター」という資格を取得しました。それがきっかけとなり、焙煎業務に携わったのちコーヒー豆の買付担当になりました。
生豆の調達管理・品質チェック・豆の味わいを活かす商品企画(ブレンディング)まで行っています。買い付ける生豆がコーヒーの味わいに大きく影響するため、ときには海外に赴いて品質の確認をすることも。そこで新しい買付候補の豆に出会えたりすると、提案できる味わいの幅が広がることにわくわくします。
──もうひとつ、コーヒーの難関資格を取得されていますね。
「Qアラビカグレーダー」のことですね。スペシャルティコーヒーの品質を世界共通の基準で評価できる国際資格なのですが、私のメインの仕事である「コーヒー豆の調達」を行う際に、バイヤーさんやサプライヤーさんと話をする機会が多く、業務上必要だと感じたのがきっかけです。改めて、コーヒーの魅力を知るいい機会にもなりました。
今回は、ドトールでの経験や資格を取る際に得た知識を活かして、豆の選び方についてご紹介したいと思います。
コーヒー豆の買付担当に聞くコーヒー豆の選び方
──コーヒー豆の種類はたくさんあると思うのですが、味わいは大きく変わるものなのでしょうか。
コーヒー、難しいですよね。
大まかにお伝えすると、コーヒー豆はアラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種の3種に分類され、さらに派生して何百もの品種があり、それぞれ香りも口当たりもさまざまです。
みなさんがカフェでよく飲むのは、繊細な香りや酸味のバランスが特徴的な〈アラビカ種〉がほとんどです。缶コーヒーなどによく使われているのが、力強い味わいの〈ロブスタ種〉。日本ではあまり見かけませんが、〈リベリカ種〉は独特の風味を持っています。
ただ、コーヒーはコーヒー豆の品種だけで味が決まるわけではなく、標高、土壌、気候、プロセス(精選方法)、焙煎度合、抽出方法などすべてが味に影響します。
──はじめてのコーヒー豆選びで失敗しないコツを教えてください。
豆を選ぶ前に、まず基準となる味をつかみましょう。多くのコーヒーショップでは、自社の定番品として独自のブレンドコーヒーを提供しています(ハウスブレンド)。そのお店のハウスブレンドを飲んで「もう少しコクが欲しい」「もっと軽やかな酸味が好き」など感じるものがあったら、その軸から広げて自分がおいしいと思うコーヒーを探ります。酸味・苦味・コクなどをパラメーターやチャートで表示しているお店もあるので、それらを頼りに選ぶのがおすすめです。
また、コーヒーの風味の種類をチャート化した「コーヒーフレーバーホイール」を活用して、感じた風味の特徴を言語化していくと自分の好みがより理解しやすいでしょう。
──コーヒー豆を選ぶ際にみるべきポイントを教えてください。
① 豆の産地はどこなのか
② ブレンドかストレートか
③ 焙煎度合はどのくらいなのか
コーヒー豆を選ぶ際は、このあたりをみていくのがおすすめです。
1.豆の産地はどこなのか
コーヒーは産地によって個性がでます。ハウスブレンドを基準にして、自分の好みに近い個性のある豆を選んでみてください。例えば、小売店などで購入できるドトールの定番品は、「香り豊かなまろやかブレンド」です。それを基準に、複数の産地の豆を楽しめるコーヒーセット「ドトール ヒストリーツアー」などで、自分の好みを理解して他のコーヒー豆に挑戦してもいいですね。
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ブラジル、コロンビア産のコーヒー豆をメインに使用した、香り豊かなまろやかブレンドです。酸味・苦味・コクのバランスにこだわり、毎日飲んでも飽きのこない味わいに仕上げました。 |
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ドトールがお届けする、コーヒーの歴史とともに旅するドリップコーヒー。 ギフトボックスは、コーヒーの旅にぴったりな鞄をイメージし、6か所を巡った証のパスポートスタンプをあしらいました。 鞄を開けると個性豊かな6種の味わいと物語が広がります。ご家族、お友達、お世話になった方へのプレゼントにも最適です。 |
2.ブレンドかストレートか
ブレンドコーヒーは、複数の種類の豆を組み合わせて作るコーヒーのことです。通常、2種類以上の異なる産地・品種のコーヒー豆をブレンドし、それぞれの特徴を活かしつつ、調和のとれた味わいや複雑な香りを生み出します。
収穫期やロットの違いによって生じる味の揺れを調整しながら、1年を通して同じ味わいを提供しているのがブレンドです。なので、いつでも同じ味を飲みたい方はブレンドがおすすめです。
一方ストレートコーヒーは、単一の産地で収穫したコーヒー豆のみで作られています。産地ごとの特徴や単品としての個性を楽しめるのですが、ストレートコーヒーの中でもさらに限定的な要素で分けられた「シングルオリジン」がおすすめです。
シングルオリジンは、特定の農園や地域で収穫された豆を使用したコーヒーで、「どの農園で、どんなプロセス(精選方法)で作られたか」を含めて楽しめるのが大きな魅力。ストーリーで選びたい人にはシングルオリジンがぴったりですね。
3.焙煎度合はどれくらいなのか
ざっくり言えば、「苦味が好きなら深煎り寄り」「軽やかさが好きなら浅〜中煎り寄り」です。ただし、同じ焙煎度合でも生産国や品種によって味わいの出方が異なりますので、国、精選方法、お店のPOP、パッケージなどのコメントを合わせて見ていただくと、自分好みの一杯に近づきやすくなります。店員さんとコミュニケーションを取りながら購入するのも楽しいので、わからなければ、ぜひ店員さんに聞いてみてください。
──購入した豆はどのように保存すればよいか教えてください。
コーヒーにダメージを与えるのは、主に「温度・光・酸素・湿気」です。購入したコーヒー豆は、暑い場所や直射日光の当たる場所を避けて冷暗所に置くことが基本です。酸化を防ぐため、できれば密閉性の高いキャニスターなどに入れて豆のまま保存するのがおすすめですが、短期間で飲み切るような量であればジッパー付き保存袋に入れて冷蔵庫で保管するのが試しやすいと思います。
※ジッパー付き保存袋はビニール臭が移ってしまう場合もあるので、匂い移りのないものを選んでください。
豆を挽いて粉にした場合は、含有していた香気が抜けやすく周囲の香気を吸ってしまうなど、劣化が加速するので早めに飲んでくださいね。飲み切れる量をこまめに購入することも大事な「保存テクニック」です。
──「コーヒ―豆はなるべく新鮮な方がよい」と思っているのですが、実際はどうでしょうか?
新鮮であるに越したことはないのですが、「新鮮な豆=正しい選択」とは言えないケースも。焙煎直後はガスの放出が強く、その強さによってコーヒー成分の抽出を妨げてしまい、本来の香りや味わいを十分に引き出せないことがあります。例えば、ベリーのような香りが特徴のコーヒー豆は、焙煎直後に香ばしさが前に出すぎてフルーティーさが隠れてしまいますが、少し時間をおいてから抽出すると、コーヒー豆本来の香りを感じることができます。
焙煎直後のコーヒーがおいしいとは必ずしも言えないように、新鮮なコーヒーだから、豆の香りが楽しめるかと言えば違うわけです。
とはいえ焙煎したての新鮮な豆があれば、日に日に変化していく味わいを体験でき、自分好みの「飲みごろ」を探しやすくなるので、その経過を楽しむことができますね。粉にすると一気に劣化が進むので都度抽出する分だけを挽き、早めに使い切るのを心がけましょう。
豆選びをさらに楽しむ?スペシャルティコーヒーの選び方
──スペシャルティコーヒーとはどんなものですか。
シングルオリジンを試していくと、「スペシャルティコーヒー」というワードを目にするようになるかと思います。スペシャルティコーヒーとは、生産工程・品質が徹底して管理され、特徴的な風味特性を持っており、それを飲むお客様がおいしいと評価して満足していただけるコーヒーを指しています。具体的には、プロが基本的な項目の評価に加えて風味の素晴らしさや個性を具体的な言葉で表現し加点評価していくことが特徴です。以前は、甘さやボディ感など各項目で定められた基準点以上の評価を得たコーヒーがスペシャルティコーヒーとして認定されていましたが、近年、世代間による評価軸のギャップが生まれたり、新しい市場が生まれたことによる価値観の多様化など、評価背景も大きく変わったため、評価の内容や方法が見直されました。官能評価だけでなく、生産における背景やストーリーも大きく評価されるようになり、「スペシャルティコーヒー」の意味は広義的になっています。
評価項目の変化はあるものの、スペシャルティコーヒーならではの特徴的な風味特性を楽しめるのは間違いないので、未知のコーヒー体験を楽しんでほしいですね。
──スペシャルティコーヒーを選ぶとき、どんな点に注目すると良いでしょうか。
スペシャルティコーヒーは基本的に品質が高く、焙煎度合・産地・プロセス・香味の4つが読み取れればかなり味をイメージすることができるので、自分の好みに合ったものを選ぶのがおすすめです。不明点があれば、店員さんと対話しながら好みのコーヒーを見つけてくださいね。ひとつ注意したいのは、「スペシャルティコーヒーなので、風味を感じてもらいたい」というお店側の配慮から、浅煎りで仕上げがちです。深煎りが好きな方は、好みの焙煎度合を把握して選ぶと安心ですよ。
世の中のコーヒーの消費量を増やしたい
──コーヒーの魅力はどこにあると感じていますか。
コーヒーは終わりがないところが魅力ですね。ある地域で評価が低かった香りが別の地域では高く評価されたり、コーヒーの消費国も増えたり、新しい品種やプロセスがどんどん出てきたり。理解したと思った瞬間に、知らない景色が現れる。その繰り返しなので飽きることがありません。
──平田さんはどのようにコーヒーを楽しんでいるのでしょうか。
カフェ巡りなどをして、他のブランドの工夫を見るのが好きです。
絶対においしい一杯を飲みたい日は、香り・焙煎度合・プロセスなどの「要素」で何を飲むかを決めます。逆に冒険したい日には、珍しい産地や新しい品種に挑戦します。
それから、個人的にコーヒーの楽しみ方を研究しています。オリーブオイルにコーヒー豆をそのまま漬け込んでコーヒーオイルを作ってみたり。そのオイルをミートソースに加えたり、当社のジャーマンドックにかけたりもしました。香ばしさとコクが増しておいしかったです。コーヒーは肉との相性が抜群ですね。
──資格取得も研究の一環でしょうか。
業務上必要だと感じて取得したのがきっかけではありますが、そこで得た知識や経験は個人的な研究にもかなり活かされていますね。
特に、Qアラビカグレーダーの試験は印象的でした。資格を取得するための1週間の集中プログラムでは、香り識別やブラインドテストなどを徹底的に行います。暗室で赤いライトだけを灯して粉の色が見えない状態で「どの生産国・焙煎度の豆か」を当てるテストもあり、正直「大変な試験だな」と思いましたが、ドトールでのこれまでの経験が支えになりましたね。
私は仕事を通じて「世の中のコーヒーの消費量を増やしたい」という思いがあるので、おいしいコーヒーを世の中に広げるための知識を深める良いきっかけになりました。
──最後に、読者の方がコーヒーをより楽しむためのアドバイスをお願いします。
私が好きな豆は、独特の風味がクセになるマンデリンです。もし挑戦される方がいたら、コーヒーのみでその特徴的な香りを楽しんでもらいたいですね。スイーツと一緒に楽しみたい方は、柑橘のさわやかさを引き立てるオレンジタルトのようなシトラスのスイーツと一緒に愉しむのがおすすめです。
コーヒーは、次々に新しいものが出てきますし、年を重ねるにつれて自分自身の価値観も変わります。コーヒーを飲む度に知らない世界が広がるので、ぜひ、みなさんもお気に入りの一杯を探してみてください。