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障がい者雇用農園 “D-FARM” ──ママ社員が実現した前例のない取り組み M. Sato

M. Sato
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入社12年目を迎える佐藤 美波は、障がい者雇用農園 “D-FARM” を担当しています。自分の当たり前は誰かにとっては当たり前ではないという考え方を大切に、日々業務に携わってきました。今回は、自身も時短勤務者として働く佐藤のこれまでと、ドトールコーヒーのCSR、SDGsの取り組みについてご紹介します。

前例のない障がい者雇用の農園プロジェクト “D-FARM” を担当

▲ 本社異動前の送別会でパートナーの皆さんからプレゼント

2009年に新卒入社をした佐藤 美波。今年で入社12年目を迎える彼女は、店舗運営・管理部門とさまざまな経験を積み、2021年現在は人事総務部の採用教育課に所属しています。中途入社者や障がい者・外国籍社員など、幅広い採用業務を担当している佐藤。育児のため短時間勤務でありながら、係長として日々業務にあたっています。

人事にきて丸5年が経ちました。これまでいろいろとチャンスをいただきやってきたのですが、障がい者雇用の農園のプロジェクトが一番印象に残っています。現在も試行錯誤しながら取り組んでいるものです

上司の言葉がきっかけで、佐藤はこのプロジェクトを担当することになります。社内の状況や事情、ましてや法律のことなどまったく知らない状態からのスタートでした。 

学生時代に生徒会活動や福祉コースの専攻を通し、障がい者の方々との関わりや学びの経験はありました。ただ、ドトールで障がい者の方々に関わる仕事をするとは思ってもいませんでしたね。社内の障がい者雇用の現状把握から始め、法律や制度、農園×障がい者雇用の仕組み理解や他社事例など、とにかく情報収集をすることから始めました

運営企業の考えに賛同し、社会的環境の変化に対応するためにも農園導入を提案することに決めた佐藤。しかし、企画や提案の経験がほぼなかったため、資料作成や上司への答申にも大変苦労しました。

障がい者雇用において、ここまで大きな取り組みは前例がなかったんです。そのため、社内で承認されるまでに長い期間を要しました。無事に承認された時はやり切ったと感じましたね。ただ、そこが本当の意味でスタートラインに立った瞬間だったんです

そうしてゼロからスタートした農園ですが、約5年経った今では、千葉県船橋市の共同農園内で4つにまで拡大しました。障がい者スタッフ12名、シルバー管理者4名を雇用し、1農園4名体制で日々運営を行っています。野菜は、葉物が中心ではあるものの、キュウリやトマトなどのつる物野菜や、ブロッコリーやニンジンなど、大きな実のなる野菜も栽培することが可能です。

農園名は“D-FARM”。DOUTOR、DEVELOP、DELIGHTの意味を込めています。太陽をモチーフにしたロゴは、知的障がい者のアーティストを応援する団体のパラリンアートさんに依頼しました。収穫した野菜は本社や工場へ配送し、社員の福利厚生として配布しています。また、子ども食堂や小学校、地域のイベントへの寄付や一部店舗での販売も行ってきました。スタッフには、自身の仕事を通じて成長をして欲しいですし、自信をもって欲しいです。一生懸命育てた野菜を食べてくれた人が喜んでくれたり、空腹を満たしたり、健康につながったり。自身の仕事が誰かの幸せにつながっている、そう感じてもらいたいですね


ドトールコーヒーを変える1人になりたい。直感で歩んできたこれまでの人生

▲ ネパール滞在中、ホームステイ先にて

高校では福祉コースに在籍し、介護福祉士の国家資格を取得。大学では外国語学部に進学し、通称ネパールゼミに所属していた佐藤。ネパールにおける女性の地位向上や村の教育について学んでいました。

これまで、自分でやってみたいと思ったことをやってきました。自身の直感で選んだことが多かったです。結局やるのは自分なので、最終的には自分で考え自分で決めるということを大切にしてきましたね

この志向は中学時代に受けたアルピニストの講演に影響されたものでした。ネパールの村の実態を知った佐藤は、自分の当たり前を見つめ直します。

講演は、エベレストの麓にあるネパールの村の子どもたちの話でした。学校に行けず、家のために働くのが普通。女性の地位は低く、男性が優位である文化。私にとってはとても衝撃的な話でした。“これまで自分が当たり前だと思っていたことが、誰かにとってはそうではない”ということ、“自分はとても恵まれており、自分で考えて選択することができる環境にいる”ということを強く感じました。まだ中学生だった自身の人生に大きな影響を与えてくれた経験です

入社後の今でも、この考え方は佐藤に影響を与えています。そんな彼女がドトールコーヒーに興味を持ったきっかけは、エクセルシオール カフェを利用していたことでした。

運営元を何気なく調べたところ、ドトールコーヒーの存在を知り、会社説明会に参加することを決めます。 説明会や先輩社員の印象、創業者の書籍などドトールコーヒーと接点を持った佐藤。次第に考えや想い、社風が自身に合っていると感じるようになります。そしてその直感は面接で確信へと変わりました。

入社を決意したのは、面接時に言われた女性人事担当者からのお話が大きかったです。ドトールはまだまだ変えていかなければいけない課題が山積みであり、特に女性に関しては管理職がほぼいないこと。若い社員はライフイベントを迎えると辞めてしまう傾向であるという現状を話してくれました。そして『あなただったらこの会社を変える1人になれると思うんだよね。やってみない?』と言われたんです。この会社ならと、最終面接前に勝手に入社が決まった気分になっていましたね

そうして2009年に入社した佐藤は、店舗運営職や経営管理部での経験を重ねていきました。その後店舗に戻り店長を経験した後、産休・育休を取得。時短勤務で復職し、自身が後輩ママ社員のロールモデルとなるよう、育児とキャリアの両立に奮闘しています。

5年目を迎えるD-FARM。苦労以上にやりがい、成長を感じてきた

▲ 屋外型ビニールハウス農園のD-FARM

2021年11月で5年目を迎えるD-FARM。これまでの5年間には、さまざまな出来事がありました。

当初はまずスタッフに毎日農園に来てもらうことを目指していましたが、なかなか簡単にはいきませんでした。他にも休職や退職、スタッフ間のトラブルや農場長との衝突など、頭を悩ますことも多かったです。『農園での仕事が嫌』とスタッフから泣いて電話がかかってきたこともありました。

担当者として苦労が絶えなかったという佐藤。しかしその反面、喜びややりがいを感じることも多かったのです。

初めは目もあわせてくれなかったスタッフが、名前を覚えて声をかけてくれるようになったり、LINEや手紙をくれたりするようになりました。少しずつですが、関係性が深まったのは嬉しかったです。また、できなかった作業ができるようになっていたり、チーム合同で収穫作業をしたりしている姿をみると、成長に関われているというやりがいを感じます

試行錯誤しながら農場長と一緒に運営管理をしてきた佐藤には、スタッフに対して大切にしている3つの考え方があります。

一つ目は、特別扱いしないことです。

スタッフはそれぞれ異なる障がいがありますので、もちろん安心・安全に働くための配慮はしています。しかし、初めからできないと決めつけるのではなく、まずやってみてもらい、できるように工夫をすることを大事にしているんです

人として、社会人として当たり前のことは同じようにする。D-FARMを通じて人として成長できるようになって欲しいという思いがそこにはあります。

 二つ目は、違いを否定せず受け入れることです。

障がいに関わらず育って来た環境が違うので、みんなそれぞれ性格や価値観は異なります。自身の当たり前がそうではない、これは農園で特に強く感じることです。相手を変えようとするのではなく、自身が相手に合うように変われるかを意識しています

三つ目は、頑張りましょうではなく、大丈夫と声をかけることです。

運営当初はよく『〇〇さん頑張りましょう!』と声をかけていました。しかし、スタッフと接しているうちに、彼らはすでに頑張っていると気づいたんです。良かれと思って言った言葉が、プレッシャーとなっていたことに気づきました

D-FARMでの経験を通じて、自身の考え方を変化させてきた佐藤。人として成長し、より良い農園運営に尽力してきたのです。

D-FARMの認知拡大、スタッフの特別な場所になることを目指して

▲ D-FARMで働くスタッフ

試行錯誤しながら農園の運営管理をしてきた佐藤ですが、まだまだ手が付けられていないことが多いと言います。そんな彼女が思う今後とは。

この5年間、農園数を拡大しつつやってきました。通常の業務にプラスアルファでやってきたので、運営管理だけで精いっぱいになっていたんです。そのため、農園の存在を社内外にしっかりと認知させることができていないと感じています。最近は定期的に社内アナウンスを行い、野菜を配布したり、農園の様子を共有したりするようにしています。ただ、人事がやっていることだと思われているので、全社的に取り組めるようにしていきたいです。また、社外に対してはほとんど働きかけができていないため、今後力を入れていきたいと思っています

2021年現在、さまざまな企業がSDGsやCSRの取り組みに励んでいます。その中でもドトールコーヒーは、比較的早い段階からダイバーシティに関して積極的な取り組みを行ってきました。その一つであるD-FARMに対し、企業の人間としてはもちろん、農園の担当者として佐藤には強い思いがあります。

D-FARMが、働くスタッフにとって特別な場所となり、ここで働くことが成長につながってほしいです。そして、スタッフたちの仕事が誰かの幸せ・やすらぎ・活力につながればいいなと。そのためにも社内だけではなく、社外の方々に存在を知っていただきたいです。スタッフが暑い日も寒い日も一生懸命育てた野菜を、1人でも多くの人々に届けていきたいと思っています

入社当時は思ってもいなかった障がい者雇用農園に関わっている佐藤。自身も時短勤務者として働きながら、ドトールコーヒーのCSR向上・ダイバーシティの推進に力を注ぎ続けていきます。

K. Hashimoto
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