殆どの観光客にとってフラはポリネシアン・レビューで垣間みる華やかな踊り以外に何物でもない。しかし正統派が呼ぶフラには伝統的な伝統的なカヒコ(古典)とアウアナ(現代)フラがあり、伝統的なフラは現在でもハワイ、米本土、さらに外国においても沢山の老若男女や子供達が修得している。彼らは各々のフラ・ハラウ(フラの学校)においてクムフラと呼ばれるフラ・マスターから代々伝えられてきた伝統のスタイルを学んでいる。フラは豊かな歴史と密着したハワイアンのダンス芸術であり、真の魅力もそこにある。フラを取り仕切る古代神ラカにまつわる厳しいカプ(タブー)に始まり、初期カルビン教徒の宣教師によるフラ禁止令と、19世紀後半の復活、そしてハリウッドの映画に登場した通俗で安っぽい演出のものまでフラは様々な変遷を経て現在に至っている。
選ばれたごく少数の人によって宗教的責任を担っていた時代から上流会級を楽しませるエンターテイメントとなった時代までフラの役割は時代の流れとともに変化した。しかしいずれの時代にあっても常に物語や重要な出来事、さらには歴史を伝えるための複雑な言語や詩を補足し修飾する手段であった。
19世紀に入りハワイ語を話したり理解できる人が少なくなったりフラ言葉に頼ることからより明瞭で描写的な動きに重点が置かれるようになった。しかし一般に信じられている程手の動きで物語の内容を伝えるものではなくストーリーの本質はチャント(詠唱)や歌詞で表現されている。また1920年代頃からポピュラーになったハワイアン・ソングは観光客や外国に住む人達がハワイアンを理解する上での一助となった。こうした歌の多くはタイトルがハワイ語でも歌詞は英語でありパパ・ハオリ(白人との混血)と呼ばれている。「珊瑚礁のかなたに」やラブリー・フラ・ハンズも厳密に言えばハワイアン・ソングではないが未だに大変ポピュラーで多くの人々に口ずさまれている。
ハワイを訪れた人達はフラの様々なフォームを色々と異なる環境の中で見る事が出来る。古典にしろ現代にしろ、本物のフラはハワイアンのアートフォームの結晶であり大いに啓発されるものがある。 |
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