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ママだからといって挑戦を諦めない
──仕事と育児をタフにこなすママ店長の想い
M. Takahara

M. Takahara
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ふたつの店舗で店長を兼任しながら、ふたりの子どもを育てている高原 みさ。限られた時間の中で仕事もプライベートも充実させようと奮闘する背景には、自分を含め周りの人間への深い愛情がありました。仕事と育児を両立させるためのコツや、ほかのママ社員にも伝えたい考え方に迫ります。

一度離れたからこそわかった、“お客様のために”働く意味

岡山にあるドトールコーヒーショップで店長を務めている高原 みさ。専門学校生だった2008年にアルバイトを始めたことで、ドトールとのつながりが生まれました。

高校生のときも飲食店でアルバイトをしていたんですが、効率を重視したお店だったので、飲食店の接客業にはあまり良い印象を持っていませんでした。
しかし、ドトールではスタッフ全員がお客様のためにという意識を強く持ち、歳の近いパートナー(アルバイト)の先輩たちもみんな接客を大事にしていたんです。私も先輩たちのようになりたいと憧れて、少しずつ接客が好きになっていきましたね

専門学校を卒業すると同時に結婚した高原は、卒業後もドトールでアルバイトを続けていました。ふたりの子どもを出産して育児に奮闘しながらも、すっかり好きになった接客を楽しんでいたのです。

しかし、離婚をきっかけに正社員として働きたいと思うようになります。そこでいったんドトールを離れ、生命保険会社の営業職に就きました。

晴れて正社員となった高原が担当したのは、法人向け保険の営業でした。毎日飛び込みで営業するも、面会することすらかなわないことも日常茶飯事。つらい日々を送る中で、高原は再びドトールで働きたいという想いを強くしていきました。

ドトールではお客様のために働いている実感がありましたが、保険の営業はそうではありませんでした。そのとき、やりがいを実感できないと仕事は続けられないと思ったんです。ドトールのアルバイトを通じて接客が好きになったので、もう一度お客様のために働ける接客業に戻りたいと考えていました

ドトールで働きたいという想いが膨らんでいたとき、アルバイトをしていた店舗の店長が社員にならないかと声を掛けてくれました。そうして高原はドトールへ戻り、社員として新たなスタートを切ることになったのです。

積極的なコミュニケーションを通じ、周囲の協力を得ながら働く

高原は、小学生の子どもふたりを育てる母親でもあります。パートナー時代に出産したためドトールの育休制度を活用し、子どもたちがそれぞれ保育園へ入園したタイミングで復職しました。

子どもが毎月のように熱を出すため、急なシフト調整が必要になったことも一度や二度ではありません。急を要するときでも一緒に働くスタッフが支えてくれたので、仕事と育児を両立できました。

周囲の協力を得るために高原が心がけていたのは、日頃から積極的にコミュニケーションを取ることでした。

休憩時間は、ほかのスタッフとなんでもいいから話をするようにしていました。相手の話を聞いたことも、私の愚痴を聞いてもらったこともあります。日頃からコミュニケーションを取って関係性を築いておくことで、子どもの発熱といった急な出来事が起きたときにも協力が得やすかったと思いますね

周りの理解を得ながら働けたことから、高原は育児が理由で仕事を辞めようと考えたことはありませんでした。ドトールコーヒーの正社員となってからは、より責任のある店長として店を切り盛りする立場となりました。さらに、2019年から高原は、ひとりで2店舗の店長を兼任しています。

もともと働いていたお店は自分で整えてきたので、自分の考えや想いをパートナーに伝えやすいと感じます。しかし、新しいお店でも今までと同じやり方が通用するとは限りません。商店街と駅前という立地も異なれば、お客様が求めるサービスも異なるからです。
兼任なのでひとつのお店に関われる時間も通常より短く、パートナーとのコミュニケーションも少なくなってしまいがちです。限られた時間の中でふたつの店舗をどう運営していくかは、大きな課題ですね

完璧をやめ、弱みを開示してスタッフ全員でお店を成り立たせる

ふたつの店舗の店長兼任と、ふたりの子どもたちの育児。

すべてをこなすために高原が思いついたのは、完璧をやめることでした。

すべて完璧にやろうとすると苦しくなってしまうので、優先順位をつけることにしたんです。お客様に対しては絶対に手を抜きませんが、優先順位の低い仕事や家事は頑張りすぎず、適度に手を抜くことを心がけています。
全部きちんとこなそうとして無理をすると、結果的にお客様に提供する価値が下がってしまうかもしれません。お客様のためにも、完璧を目指さないことは大切だと思いますね

自身が完璧をやめるためにも、周囲の協力は必要です。そのため高原は、周りに自分の弱みを開示することで、仕事をうまく回しています。

店長という肩書があるだけで私をすごい人だと考えるパートナーの方もいるので、『店長も同じ人間なんだよ』ということを意識して伝えるようにしています。同じ人間だからこそ、みんなの助けが必要なんだと伝えることが大事ですね。
子どもの学校行事がある日は私も仕事を休みたいといった要望も、きちんとパートナーに共有しています。それで休みが取れたときは、『みんなのおかげで子どもと楽しく過ごせたよ』と感謝を忘れません。きちんと伝えることで、パートナーも役に立てたと感じてくれますしね

店長である自分がひとりで頑張っても、お店は回らない。スタッフ全員でお店を成り立たせるために、弱みを開示するコミュニケーションを通じて協力を促す。そうして高原は、2店舗の運営を続けてきました。

さらに高原は、子どもたちにも自分が完璧でないことを伝えて育てています。

休日はママを起こしてはいけないとか、多少ホコリがあっても死なないとか(笑)。高原家のルールをつくるなどして、子どもたちがママは完璧だと思わないようにしているんです。この先、子どもたちは生きていくうえでいろいろな人に頼らないといけないので、私にばかり依存せず、誰にでも助けが求められるように育てていますね

ママだって挑戦したい──自分の姿を通して後輩に送るエール

どんなに忙しくても高原がやりがいを感じながら働けるのは、お客様やスタッフから「ありがとう」という言葉をかけられるからです。親身に育成してきたパートナーの成長が感じられたときは感慨もひとしおですし、学業との両立を見守ってきた学生パートナーが卒業したときは、泣きながらお礼を言われたこともあります。

ドトールのお店はパートナーがいるからこそ成り立っているので、今後も長く働ける環境やしくみをつくっていきたい。自身もパートナーを経験しているからこそ、高原はそう考えています。

また、高原はドトールで働くママ社員として、後輩たちの参考になるような姿を見せたいと思っています。

どうしても『ママだから無理』と考えてしまう人は多いんですが、私は『ママだって挑戦したい』と考えています。たとえば私は、突発的に休みが取れたら、ふらっとひとり旅に出かけることもあるんですよ。
子どもがいるし仕事もあるから、『子育て中はひとりで旅行に行ってはいけない』なんて決められてない。ママだって自分のやりたいことを制御しきれないときがあっても良いと思うんです

普段から子どもや周りの人に対し「私はこういう人間です」と宣言するコミュニケーションを取ることで、無理だと思い込んでいたことができるケースもあります。誰もが自分のやりたいことを実現できる可能性を持っていると、高原は自身の行動で示しているのです。

みんなが私みたいに働けばいいというわけではなく、いろいろな選択肢があるなかで、それぞれが自分のやりたいように働けばいいと思います。
あと、これから出産を控えている人は、仕事や育児のことでたくさん不安を抱えていると思うんです。そういう人たちの不安を少しでも減らせるよう、先輩ママたちに相談できる環境をつくることができればいいですね

2店舗の運営と育児をこなしながら、パートナーやほかのママの働きやすさについても想いを巡らせている高原。

持ちつ持たれつ、おおらかな精神で仕事を楽しむその姿は、今日も周囲を勇気づけています。

K. Numata
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H. Sasaki